お葬式の費用の不思議

お葬式の準備は大変な仕事ですが、その中でも特に悩みの種となるのが「費用」の問題です。多くの人がお葬式の費用について具体的な知識を持たず、実際に必要となるとその金額に驚かされることが少なくありません。お葬式の費用がなぜわかりにくいのか、そしてなぜ事前相談が役に立つのかを説明します。

お葬式費用がわかりにくい理由

  1. サービス内容の多様性:現代のお葬式は、それぞれのご希望やご事情によっていろいろなスタイルを選択することが可能です。一般的なお葬式だけでなく、家族葬、一日葬、直葬、なかには立ち会わずに火葬もすべてお任せする、といった様々なスタイルがあり、それぞれのサービス内容と費用が異なるため、一概に「これが相場です」と言い切れない状況があります。
  2. プランの内容が葬儀社によって異なる:大切な方を亡くされた直後は精神的にも肉体的にもかなりお疲れのことが多いでしょう。ご遺族の方の負担を少しでも軽くするために、各葬儀社はお葬式に必要だと思われるものをひとまとめにしてご紹介することがあります。プラン、パック、セットなどと呼ばれます。しかし、葬儀社によって必要なものについての考えが異なるため、ひとつとして同じプランはありません。そのためお葬式を比較することはとても難しい状況です。
  3. 隠れた追加費用:基本的な葬儀プランの他にも、お花や追加のサービス、宗教者へのお布施など、思わぬ追加費用が発生することがあります。これらの費用は見積もり以上にかかることもあり、最終的に思っていたよりも高い、となることがあります。
目次

お葬式費用のカテゴリー

お葬式の費用は大きく分けて3つのカテゴリーにわかれます。

  1. 葬儀一式費用
    葬儀社が提供するサービスの費用です。プランやパック、セットになっている場合や、1点ずつ計算される場合があります。
  2. 実費費用・変動費用
    火葬場や関係施設へ直接お支払する費用、当日の会葬者の人数で変わってくる返礼品や飲食接待費用、お手伝いの方への心付けなどがこれに該当します。
  3. 宗教者への支払い
    お布施やお車代、お食事を辞退されたときにお渡しするお膳料などが含まれます。

お別れの要素とお葬式プランの見方

人が亡くなってしなければならないこと、したほうがよいことを整理しましょう。ここでは、亡くなった際のお別れの要素を5つのカテゴリーに分けて解説し、それぞれのプランの見方についても触れます。

1. お亡くなりになった方のお体の扱い(物理的な処理)

旅立った方のお体をどのように扱うかは、最も基本的で必須の処理です。3点は必須です。

  • :お亡くなりなった方の移動のための車です。安置先への移動、葬儀場への移動、火葬場への移動など。
  • :火葬を行う場合、棺に納められていることが必須です。
  • 火葬:日本の火葬率は、ほぼ100%近くになります。

この他、ドライアイスやエンバーミングなどの処置がここに入るでしょう。搬送防水シーツなどの備品、棺用のお布団なども。
火葬料金には公営のものと民営のものがありますが、価格に開きがあるためプランに入っている場合とそうでない場合があります。公営の火葬場の料金は安い、条件によっては無料ですが場所が離れていて移動に時間がかかる、人気があるので希望の日時に予約が取りにくいなどの問題があります。お棺はシンプルなものがプランに入っていることが多いです。

2. 死亡届の提出(社会的な処理)

  • 死亡届の提出:役所に提出する必要がありますが、多くの葬儀社が代行してくれます。自分で行うことも可能ですが、期限や必要な手続きを確認し、葬儀社と相談しましょう。
  • 別な面からみると、会葬者を招き接待する場合は、これからこの家はこの家族でがんばります、と自己紹介する機会でもあります。その場合は、お食事や飲み物の準備、受付の準備、ご会葬のお礼品の準備などが必要かと思われます。

3. 魂のケア(スピリチュアルな処理)

「葬儀」の「儀」の部分で、宗教宗派により違いがありますが何らかの儀式が行われ、両手を合わせてお亡くなりになった方の魂のケアを行います。お亡くなりになったら仏式であれば枕元でお線香を焚く、お花を飾るなど。火葬が終わったらお骨を四十九日の中陰の間安置する壇を用意するなど。「魂・スピリチュアル・霊」と並ぶと何となく胡散臭く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、世界保健機構(WHO)でも人の健康の定義に加えるかどうか議論がなされたこともある重要な問題なのです。

4. 残された人々の心のケア(心理的な処理)

現代では、社会の変化や核家族化によりお葬式は小規模化しつつあり、その中で精神的なサポートやグリーフケアが注目されています。儀式やお別れの場を通して旅立つ人を偲び、前を向いて歩いていくための支援を葬儀社が提供することもあります。例えば、立ち合いでの納棺の儀、湯灌の儀、お花を棺に入れるお別れなどは心を癒す時間となることでしょう。また、お亡くなりになった方のために何かをすること自体が癒しとなる場合もあるでしょう。

5. 死生観の教育

リアルな死に触れることが少なくなってきた現代では、死についての教育や理解を深めることは、現代社会においても必要な課題です。時々ニュースになる親が亡くなってもご遺体はそのままに年金などを受給し続ける事件なども、死生に対する根本が揺らいでいる結果かもしれません。お葬式は数少ない「あなたの死」に触れることのできる場です。死生観の教育を通じて、人生の終わり方やその意味について考える機会を持つことはとても大切です。

このように、亡くなった後に必要な準備や手続きは多岐にわたりますが、それぞれのプロセスを理解し、適切な葬儀社と相談しながら進めることで、故人にとっても遺族にとっても納得のいく葬儀を実現できるでしょう。亡くなった後の準備を事前に知っておくことで、心の準備もでき、適切な判断が可能になります。

お葬式の領収書は保管しましょう

お葬式の費用は相続税の計算で相続財産から控除できます。領収書やレシートは税務上の証拠として保管することが必要です。

  • 葬儀関係業者に支払った費用
  • 通夜・告別式での接待飲食費用(お店で食事した場合、お弁当、スーパーやコンビニで購入したものも可)
  • 心付け
  • 宗教者への費用(お布施、お車代、お膳料も可)
  • 会葬御礼(香典返しはだめ)
  • 火葬・埋葬料
  • 死亡診断書の発行にかかった費用

お布施について

儀式でお世話になった宗教者に「お布施」袋に入れてお渡しするものです。お葬式ではお読経していただいた時と戒名を授かったときにお渡しします。 戒名は生前にいただくこともできるが、多くの場合はお亡くなりになってからいただくことが多いでしょう。

神道では「祭祀料」「祈祷料」「御礼」
キリスト教では「御花料」「御礼」と書くことが多いです。

お布施の金額

菩提寺や決まった宗教者がある場合

菩提寺や決まった宗教者に相談しましょう。お付き合いの度合いや地域性などで異なります。聞きにくい場合は、同じ菩提寺や宗教者にお世話になっている親戚や、代表者(檀家総代など)にきいてみましょう。

葬儀社に宗教者を紹介してもらった場合

決まった宗教者がなく葬儀社などに紹介してもらった場合は、葬儀社に相談します。

お布施の相場感

お葬式でのお布施は、お読経と戒名のお礼をひとつにまとめてお渡しする場合が多いようです。お布施の金額に決まりはありません。上で述べた通り、普段のお付き合いの仕方や、宗教宗派、戒名の位や地域性などで大きく変わります。

東京での一例として、「院居士・院大姉」100万円、「居士・大姉」50万円、「信士・信女」30万円など。

仏教でのお布施には3種類あり、「財施(ざいせ)」金品などのモノを分かち合うこと。「無畏施(むいせ)」恐れや不安を取り除き癒しを与えること。 「法施(ほうせ)」正しい仏の教えを伝えること。これらを三施と呼ぶそうです。

事前のご相談をおすすめします

葬儀社の事前相談を活用することで、お葬式の準備をよりスムーズに、そして経済的にも精神的にも負担を軽くすることができます。お葬式の費用に関する不透明感を解消し、納得のいくお葬式にするために、この機会に葬儀社との事前相談を考えてみてはいかがでしょうか。

事前相談のメリット

  • 何にお金を使うのかが見えてきます:葬儀社との事前相談により、どのようなお別れがしたいのか、そのために必要なサービスは何か、費用はいくらかかるのか、といったことを明らかにすることができます。事前相談をしておくことにより、無駄な支出を減らしながらも意味深いお葬式をすることが可能となります。
  • ご自身で選択するサービス:サービスをゆっくりと比較・検討する時間が持てるため、急いで決める必要がなく、押し付けでない納得のいくサービスをご自身で選択することができます。
  • お別れに集中できる:大切な方が亡くなってから慌ててお葬式の準備にかかると心身ともに大きな負担となります。事前相談を活用することで、余裕をもって準備を進めることができ、見送る方は大切な時間を本当に大切なお別れにあてることができます。
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